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感染性上気道炎の子猫に対するファムシクロビルの有用性について、Karen M Vernau氏らは373頭の子猫を用いてプロスペクティブに調査を実施した。その結果、抗菌療法へのファムシクロビルの追加投与は、感染性上気道炎の猫の角結膜炎治療に有用であることが明らかになった。結果はJournal of Feline Medicine and Surgery 2024年11月号に掲載された。
研究の背景
猫の感染性上気道炎の治療として対症療法の実施は一般的だが、病原微生物に対して活性を有する抗生物質の投与も適応と考えられている。ドキシサイクリンは、抗菌作用の他に抗炎症作用や抗プロテアーゼ作用も示す可能性があり、上気道炎の治療に選択されることの多い抗生物質である。
感染性上気道炎では様々な感染因子が関与しているが、その中でも猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)は最も一般的な病原体の一つである。FHV-1に対しては、90 mg/kgのファムシクロビル投与の安全性と有効性が期待されているが、子猫に使用した報告は限られている。
そこで著者らは、角結膜炎を呈する感染性上気道炎の子猫に対して、ドキシサイクリン・ファムシクロビルを併用した場合の有効性を大規模に調査することを計画した。
2019年3月から2020年10月の間に保護された子猫のうち、感染性上気道炎に起因する臨床徴候があり、体重1.3kg以下、推定12週齢以下、FeLV抗原が陰性である症例をプロスペクティブに組み入れした。臨床徴候については、過去に報告されている採点システムのうち、くしゃみの項目を削除して0〜23の範囲でスコア化した。
研究デザイン
組み入れた子猫を3つの年齢群(1〜4週齢、4〜8週齢、8〜12週齢)と2つの重症度群(軽度[徴候スコア1〜11]、重度[徴候スコア12〜23])のいずれかに層別化した。さらに各群において、以下の2つの治療群に無作為に群分けした。
・治療群DF:ドキシサイクリン 5 mg/kg BID + ファムシクロビル 90 mg/kg BID
・治療群D:ドキシサイクリン 5 mg/kg BID
上記治療薬は、体重の変化に合わせて7日ごとに調整しつつ、全ての子猫に21日間連続投与した。また、全ての子猫は0.3%オフロキサシン点眼液を12時間おきに両眼に1滴ずつ点眼された。
評価
試験開始時および終了時(21日目)に、全ての子猫に担当獣医師による身体検査およびスリットランプを用いた眼科検査を行い、臨床徴候をスコア化した。また、1日1回、21日間決められた時刻に保護施設・保護団体のケアスタッフが子猫の体重を記録し、臨床徴候をスコア化した。
臨床徴候の改善について、本研究では次の4つの異なる転帰を定義した。
・臨床徴候の消失:21日目またはそれ以前に、鼻汁を含む全てのスコアが0になった
・眼科徴候の消失:21日目またはそれ以前に、鼻汁に関係なく眼科徴候のみスコアが0になった
・臨床徴候の回復:結膜充血と眼瞼痙攣が0点、鼻汁と眼脂が1点以下になった
・眼科徴候の回復:結膜充血と眼瞼痙攣が0点、眼脂が1点以下になった
これらのスコア記録を用いて、両治療群間、両重症度群間、3つの年齢群間で比較した。
本研究には373頭の子猫が本研究に組み入れられた。
保護施設・保護団体のケアスタッフ評価
373頭のうち23頭において1日目のデータが得られなかったため、350頭の子猫において解析を行なった。臨床または眼科徴候の消失、あるいは回復を達成した子猫の割合は、治療群間に有意差は認められなかった(P = 0.242〜0.650)。
軽症でファムシクロビルを投与された子猫は、他の3つの治療群(すなわち軽症でドキシサイクリンのみを投与された子猫、またはいずれの治療群であっても重症の子猫)と比べて4〜5日早く、約75%の臨床徴候が消失した。
獣医師評価
373頭のうち42頭においてデータが欠損していたため、331頭の子猫において解析を行なった。
眼科徴候の消失または回復を達成した子猫の割合は、治療群間に有意な差は認められなかった(P = 0.312)。
ファムシクロビルを投与された子猫において、21日間の観察期間中、角膜疾患の発症が307頭中1頭のみであったのに対して、ドキシサイクリンのみを投与された子猫では282頭中8頭で発症しており、治療群間に有意差が認められた(P = 0.016)。
結論
これらの結果から著者らは、ファムシクロビルの併用は子猫の感染性上気道炎治療に有用であると報告している。
- Highlights
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子猫373頭を用いて、ファムシクロビルの併用が感染性上気道炎の治療に有用であるか評価した
軽症例において、ドキシサイクリンのみを投与された子猫に比べてファムシクロビルを併用された子猫は有意に早く臨床徴候が消失した
ファムシクロビルを併用された子猫では角膜疾患の発症も有意に少なかった
論文情報:https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X241278413
(こちらはOpen Accessのため、元文献が上記リンクより閲覧可能です)
※正確な論文の解釈をするためにも原文を読むことをお勧めいたします。