ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルスジャパン株式会社より、猫の慢性腎臓病(CKD)に伴う蛋白尿の漏出抑制を効能又は効果として広く使用されている「セミントラ®4mg/mL経口液猫」が、新たに猫の全身性高血圧症に対する適応を取得されました!
これにより、セミントラ®4mg/mL経口液猫は、CKDにおける二つの重要な管理指標である蛋白尿と血圧を同時にケアすることが可能となりました。本記事では、猫の高血圧症の概要と、CKDとの密接な関連、そしてセミントラ®の作用機序について解説いたします。
資料・コンテンツ提供:ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルスジャパン株式会社
猫の高血圧症とは? – 静かなるサイレントキラー
猫の高血圧症は、初期には臨床症状がほとんど見られないため「サイレントキラー」とも呼ばれています。
しかし、その進行は様々なリスクを伴い、特に標的器官障害(TOD: Target Organ Damage)を引き起こすことが知られています。
• 脳: 沈鬱、混乱、異常発声、発作
• 眼: 突然の失明、眼内出血、網膜剥離
• 心臓: 左室肥大、心雑音、心不全
• 腎臓: CKD(慢性腎臓病)
高血圧症は早期に発見し、管理を開始することが非常に重要です。高齢の猫では有病率が上昇し、年齢とともに血圧も上昇1)する傾向があるため、定期的な健康診断と血圧測定が推奨されます。
血圧の分類は以下の通りです。2)
| リスク分類 | 収縮期血圧(mmHg) | 標的器官障害のリスク |
|---|---|---|
| 正常血圧 | <140 | ほとんどなし |
| 前高血圧 | 140–159 | 低 |
| 高血圧 | 160–179 | 中 |
| 重度高血圧 | ≥180 | 高 |
CKDと高血圧症の密接な関係
CKDと高血圧症は、しばしば併発する疾患として知られています。報告によれば、CKDを持つ猫の最大65%が高血圧であり、また高血圧を持つ猫の最大74%がCKDであるとされています。
これらの疾患は相互に関連しており、両疾患を適切に管理することが極めて重要です。

病態の鍵を握る「RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)」
CKDと高血圧症、この二つの疾患の進行には、共通してRAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)の過剰な活性化が深く関与しています。
血圧調節におけるRAASの役割
血圧の調節にはRAASが関与しています。正常な状態では、腎臓の血流量が少なくなるとRAASが活性化し、ナトリウムや水分の体内保持を促すことで血圧を正常に保ちます。
しかし、RAASが過剰に活性化すると、体内にナトリウムと水分が過剰に保持され、血圧が上昇し高血圧状態へとつながります。

CKDの猫ではRAASが活性化
CKDの猫では、腎臓の障害によりRAASが持続的に活性化し、生理活性物質であるアンジオテンシンⅡが増加します。
このアンジオテンシンⅡは全身の血管を収縮させることで全身性高血圧を引き起こすだけでなく、腎臓の線維化や糸球体内圧の上昇を介してCKDの病態をさらに悪化させるという悪循環を生み出します。
実際に、CKDの猫では健常猫に比べて血中アンジオテンシンII濃度が著しく高いことが示されています。

CKD、高血圧症両方の治療を1剤に!
RAASの慢性的な活性化は、腎臓や全身に負担をかけ、CKDの悪化や高血圧症を引き起こします。
セミントラ4mg/mLはアンジオテンシンⅡ受容体(AT1受容体)を阻害することで、RAASを抑制し、CKDにも高血圧症に対しても治療を行うことができます。
• CKDに対して: AT₁受容体の阻害を通じて糸球体内圧を低下させ、蛋白尿の漏出を抑制。
• 高血圧症に対して: 全身の血管に存在するAT₁受容体をブロックすることで血管を拡張させ、全身の血圧を降下。

オーダーメード治療に最適な液剤
さいごに
CKDと高血圧症の共通の病態基盤であるRAASの過剰な活性化に対し、AT₁受容体を選択的に阻害することで、蛋白尿と高血圧という二つの重要な指標を同時に治療することが可能になりました。
本製品が、CKDと高血圧に苦しむ多くの猫とそのご家族、そして先生方の一助となることを心より願っております。
ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルスジャパン株式会社
引用文献
1) Bijsmans ES, et al.: J Vet Intern Med. 2015 May-Jun; 29(3): 855-861.
2) Acierno MJ, et al.: J Vet Intern Med. 2018 Nov; 32(6): 1803-1822.
3) Sitles J, et al. J Am Anim Hosp Assoc. 1994; 30(6): 564-572.
4) Littman MP. J Vet Intern Med. 1994 Mar-Apr; 8(2): 79-86.
5) Mishina M, et al.: J Vet Med Sci. 1998 Jul; 60(7): 805-808.
6) Westfall DS, et al.: J Vet Intern Med. 2001 Sep-Oct; 15(5): 467-470.











