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猫の腎盂腎炎の診断における血清アミロイドA(SAA)の有用性について、Maxime Kurtz氏らは125頭の猫を用いてプロスペクティブに調査を実施した。その結果、SAAは猫の腎盂腎炎の診断に有用であることが明らかになった。結果はJournal of Veterinary Internal Medicine 2024年5月号に掲載された。
研究の背景
腎盂腎炎の確定診断には腎盂穿刺尿を用いた細胞学的分析と細菌培養検査が必要となる。しかし、超音波ガイド下での腎盂穿刺は手技が侵襲的である上、腎盂拡張の程度も症例によって様々なため、実際は困難である場合が多い。
ヒト医療では細菌性腎盂腎炎の診断におけるCRPやプロカルシトニン(カルシトニンの前駆蛋白)などの急性期タンパクの有用性が評価されているが、腎盂腎炎の猫に関する報告は現時点において乏しい。近年の猫の診療において、炎症性あるいは腫瘍性疾患に対するマーカーとして血清アミロイドA(SAA)が使用される機会が増えており、注目を集めている。
著者らは、SAA が猫の腎盂腎炎の診断に有用かどうか調査することを計画した。また、腎盂腎炎の診断におけるSAA濃度のカットオフ値も算出することととした。
2018年12月から2022年12月の間に来院した6ヶ月齢以上の成猫のうち、上部あるいは下部尿路疾患のある症例をプロスペクティブに組み入れした。症状および臨床的異常所見が消失し、3ヶ月以上経過した後に再発した猫は別個体として カウントした。尿路以外における炎症性疾患、感染症、腫瘍性疾患が検出された猫および尿道閉塞がある猫を除外した。
研究デザイン
尿は膀胱穿刺、SUBのアクセスポートからのサンプリングあるいは超音波ガイド下腎盂穿刺により採取された。尿比重、スティック検査による分析、沈渣の評価および細菌培養検査を実施した。
グループ割当
グループ1には細菌性腎盂腎炎が確定(1a)または可能性が非常に高いと判断(1b)された猫が含まれた。一方、グループ2には細菌性腎盂腎炎が除外(2a)または可能性が非常に低いと判断(2b)された猫が含まれた。
確定診断(1a)および除外診断(2a)には、腎盂穿刺尿の細菌培養結果に基づいて割り当てた。細菌性腎盂腎炎の可能性が非常に高いと判断(1b)するにあたり、3名の内科認定医により十分評価された病歴および経過に加え、以下の4つの基準のうち3つ以上満たしたものとした。
細菌性腎盂腎炎の可能性評価の項目
病歴および経過が細菌性腎盂腎炎に当てはまらない場合、または上記の4つの基準を満たすものが2つ以下の場合、可能性が非常に低い(2b)と判断した。
評価
各グループ間において、CBC、生化学検査、尿検査、超音波検査所見、SAA濃度をそれぞれ比較した。
組み入れ基準を満たした250頭のうち、101頭が除外された。残った149頭中106頭は1度のみカウントされたが、14頭は2度、5頭は3度カウントされた。
来院前に臨床徴候が認められた期間の中央値は、グループ2の猫が168日(84〜1,116日)に対してグループ1の猫は48日(24〜72日)と有意に短かった。
149頭のうち9頭の猫が来院前に抗生物質の投与を受けており、すべてグループ2bに属していた。
SAA濃度について
SAA濃度の中央値について、グループ2aでは4 mg/L(1.8〜5.6 mg/L)、グループ2bでは5.4 mg/L(3.1〜9.7 mg/L)であったのに対し、グループ1aでは86.8 mg/L(73.3〜161.5 mg/L)であり、いずれのグループに対しても有意に高値であった(P < 0.001)。同様にグループ1bでは98.8 mg/L(83.1〜147.3 mg/L)であり、グループ2aおよび2bに対してそれぞれ有意に高値であった(P < 0.001)。
本研究結果から算出したSAA濃度のカットオフ値は51.3 mg/Lであり、感度は88%(64〜99%)、特異度は94%(88〜97%)であった。
さらに、来院前に抗生物質を投与されていた猫を除外してSAA濃度のカットオフ値を算出すると25 mg/Lとなり、その場合の感度は100%(94〜100%)、特異度は94%(92〜98%)であった。
結論
これらの結果から著者らは、SAA濃度の測定は猫の腎盂腎炎の診断に有用であると報告している。
- Highlights
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猫125頭を用いて、SAA濃度の測定が腎盂腎炎の診断に有用であるか評価した
腎盂腎炎の診断におけるSAA濃度のカットオフ値も算出した
SAA濃度は腎盂腎炎が確定あるいは可能性が非常に高いとされた猫で有意に上昇していた
猫125頭におけるSAA濃度のカットオフ値は51.3 mg/Lだったが、来院前に抗生物質の投与を受けていない猫に限ると25 mg/Lであった。
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論文情報:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.17082
(こちらはOpen Accessのため、元文献が上記リンクより閲覧可能です)
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