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ガバペンチンが猫の血圧に及ぼす影響について、Jessica M. Quimby氏らはCKD猫13頭および健常猫16頭を用いてプロスペクティブに調査を実施した。その結果、ガバペンチンはCKDの有無に関わらず猫の血圧を低下させることが明らかになった。結果はJournal of Feline Medicine and Surgery 2024年5月号に掲載された。
研究の背景
猫は動物病院への受診時にストレスを感じやすい動物であり、血圧などの生理的パラメータを正確に測定することは容易ではない。ストレスを軽減する目的で選択されるガバペンチンは、猫に対する安全性は一般的に高いが、大部分が腎排泄されるため腎機能が低下した症例ではその使用に注意が必要と考えられる。
著者らは、ガバペンチンが猫の血圧に及ぼす影響について、慢性腎臓病(CKD)を有する猫および健常猫を用いて調査することを計画した。同時に、ガバペンチン投与による猫のハンドリングのしやすさ(コンプライアンススコア)や鎮静度を評価し、それらの効果についてCKD群と健常群で比較することとした。
猫はクロスオーバー法を用いて2回評価され、ガバペンチン10 mg/kgを単回経口投与またはプラセボを投与した3時間後に血圧、コンプライアンススコア、鎮静スコアを測定した。各猫の投与順序は各群ごとに無作為化した。
組み入れ基準
健常群には、事前に実施した血圧測定、血清生化学検査、CBC、尿検査、血清T4測定において異常所見が認められない猫を組み入れした。CKD群も同様の検査を実施し、International Renal Interest Society(IRIS)のステージ2〜4である猫を組み入れした。過去に院内で忌避行動が目立った症例や、他の全身疾患、腸疾患、腎盂腎炎や尿路閉塞、入院治療や静脈点滴を要する腎疾患が見つかった猫はそれぞれ除外した。
コンプライアンススコアと鎮静スコア
コンプライアンススコアおよび鎮静スコアは同一の臨床医が、薬剤投与前および投与3時間後に評価した。
コンプライアンススコアは以下の4段階で評価した。
3:保定に対する抵抗なし
2:保定に対する抵抗は最小限
1:保定が困難で抵抗している
0:極度に抵抗している
また、鎮静スコアは以下の5段階で評価した。
4:眠っている、手を叩いても反応なし
3:頭を持ち上げることができる
2:うつ伏せの状態で立ち上がれない
1:立ち上がれるものの、ふらつきがある
0:無鎮静状態
血清ガバペンチン濃度分析
薬剤投与3時間後、血圧測定を終えた後に採血し、ガバペンチン濃度を測定した。
評価
全体および各群間におけるガバペンチンとプラセボ投与による血圧、コンプライアンススコアならびに鎮静スコアの変化を比較した。また、血清ガバペンチン濃度と各種測定項目の関連性を評価した。
健常群に16頭、CKD群に13頭の猫が組み入れられた。CKD猫のうち、6頭はIRISステージ2、6頭はステージ3、1頭がステージ4であった。
血圧
全体および各群において、ガバペンチン投与後の血圧はプラセボ投与後と比較して有意に低下した。結果は以下の表の通り。 CKD群と健常群間の血圧変化に有意差は認められなかった。
鎮静スコア
ガバペンチン投与後 プラセボ投与後 P値
全体(n=29) 122 mmHg (82-170) 150 mmHg (102-191) 0.001
CKD群(n=13) 129 mmHg (96-170) 155 mmHg (102-191) 0.008
健常群(n=16) 121 mmHg (82-139) 137 mmHg (102-177) 0.002
29頭の猫にガバペンチンを投与した際の3時間後の鎮静スコアは、プラセボ投与時よりも有意に高かった(P値 = 0.004)。
各群で比較したところ、CKD群ではプラセボ投与時よりもガバペンチン投与時の鎮静スコアは有意に高かったが(P値 = 0.02)、健常群では有意差は認められなかった(P値 = 0.5)。
コンプライアンススコア
29頭の猫における3時間後のコンプライアンススコアは、プラセボを投与した場合と比べてガバペンチンを投与した方が有意に高かった(P値 < 0.0001)。
CKD群(P値 = 0.03)および健常群(P値 = 0.001)を個別に評価した場合にもガバペンチンの投与により高いコンプライアンススコアが認められた。
血清ガバペンチン濃度
CKD群の11頭および健常群の15頭において、血清ガバペンチン濃度を測定した。投与3時間後の血清ガバペンチン濃度の中央値は、健常群で10,330 ng/ml(1,469-15,010)、CKD群で11,559 ng/ml(3,709-22,050)であった。CKD群では、ガバペンチン濃度はプラセボ投与時とガバペンチン投与時の血圧の変化の程度と相関があり(P値 = 0.02)、血圧の低下が大きい猫ほどガバペンチン濃度が高かった。健常群においてはこの傾向は認められなかった。
結論
これらの結果から著者らは、ガバペンチンはCKDの有無に関わらず猫の血圧を低下させる可能性があると報告している。このことから、血圧測定が必要な猫にはガバペンチンを投与する際に考慮するべきであろうと述べている。
- Highlights
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CKD猫13頭および健常猫16頭を用いて、ガバペンチンが及ぼす血圧への影響を評価した
ガバペンチンによるコンプライアンススコアおよび鎮静スコアの変化、血清ガバペンチン濃度との関連性についても評価した
CKDの有無に関わらず、ガバペンチンは猫の血圧を有意に低下させた
CKD猫の中には、ガバペンチンの血中濃度が上昇しやすく、また血圧が低下しやすい症例も認められた
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論文情報:https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X241240326
(こちらはOpen Accessのため、元文献が上記リンクより閲覧可能です)
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