
クレボル対談
記事提供:物産アニマルヘルス株式会社
インタビュー
欧米における催吐薬の現状とクレボルの開発
またどのような経緯でクレボルの開発に至ったのでしょうか?
さらに、犬の嘔吐誘発もよく検索されていました。これらの結果から、犬が誤って有毒なものを飲み込んだ際の影響や、誤飲時の対応について不安を抱えている飼い主が非常に多いことが推測されました。
そこで嘔吐を誘発する活性物質の探索を開始し、最終的にロピニロールにたどり着きました。
次に犬が有毒なものを食べた場合は、処置時間が重要になるため、薬物の迅速な吸収と速やかな効果発現が必要であると考えました。
ただし、侵襲性や専門的な技術が必要な注射剤は避けたいとも考えました。このような検討過程を経て、私たちが目指すべき製剤は催吐作用を持つ点眼薬であるという結論に至りました。
欧米の獣医師がクレボルを評価するポイント
クレボルには大きく3つの特徴があり、①使いやすいシンプルさ。②約50%の犬が10分以内に嘔吐し、95%の犬が30分以内に嘔吐したという効果(図1)の信頼性。
早い症例では投与後3分で嘔吐する犬もいました。③注射のように痛みや恐怖を与えない非侵襲性です。

クレボルの効果が得られなかった場合
例えば、アポモルヒネなど他の催吐剤を追加するのでしょうか?
この臨床試験の概要を説明します。試験実施計画書には投与後20分以内に嘔吐しない場合は2回目の投与をするように規定されていました。
そして本剤投与群100頭中30分以内に嘔吐しなかったのは5頭だけで、このうち2頭は33分と37分後に嘔吐し、残り3頭は嘔吐しませんでした。
注目していただきたい点は、嘔吐しなかった5頭がすべて2回目の投与が行われておらず、実施計画書の規定から逸脱していました。
つまり規定を遵守した95頭は嘔吐したため、嘔吐が起こらない場合は、20分以内の2回目の投与が非常に重要です。
理由は、クレボルは受容体選択性が高く、有効成分の血中濃度を高めることで、受容体への刺激が高まり効果がより発揮されると考えられるからです。
ただしクレボルとアポモルヒネのように2つの異なるドパミン受容体作動薬を連続投与しても効果が認められない可能性もあり、獣医師が臨床状況を慎重に評価し、内視鏡検査、胃洗浄、活性炭投与、胃内容物の希釈など他の異物除去の検討が必要な場合もあります。
なお、クレボルを投与して嘔吐しないときに考えられることですが、犬によっては遺伝的にドパミン作動薬に対して耐性があり、この種の受容体作動薬の効果がほとんどない場合や、犬が何らかの制吐作用がある物質を摂取している場合、さらに、犬が摂取した物質の吸収時間が非常に短い場合などがあります。
ですから、嘔吐しないからといってすぐに別のドパミン作動薬を常に追加投与することは推奨しません。

クレボルの副作用と対応策
また嘔吐回数は平均4~5回ですが、もっと多く嘔吐することもあります(図2)。
嘔吐が止まらない場合は、ドパミン受容体拮抗薬であるメトクロプラミドの注射が効果的です。これは、処置後帰宅する前に嘔吐を止めるためによく使用されます。

では、本剤点眼後に眼の症状が現れた場合ですが、眼の症状は比較的目立つため、飼い主が気にすることも多いと思います。
獣医師として「問題ないので様子を見てください」と伝えるべきなのか、それとも何か介入すべきでしょうか?
まれなケースですが、透明な分泌物や涙嚢のようなものがみられたとの報告がごく少数あります。
瞬膜が突出し、眼瞼痙攣のように目を細める犬もいますが、これらも通常は軽度から中程度のものであり、数時間以内に自然に治ります。
したがって、眼関連の副作用に対してメトクロプラミドを使用する必要はほとんどありません。

日本におけるクレボルの展望
その症例は、最終的に全身麻酔を使用して痙攣を抑えるしかありませんでした。
人工呼吸をかけながら6時間ほど麻酔を維持し、その後ゆっくり覚醒させるという大変な処置が必要でした。
私はその経験以降、催吐処置にトラネキサム酸を使用していません。
今回、クレボルが動物用医薬品として承認されたことで、催吐処置における安全性の向上が期待できると思います。
そして救急に携わる立場からみても、クレボルが日本で普及していくのがとても楽しみです。

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