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クレボル対談:国内で初めて犬用催吐剤として承認された「クレボル」により、治療の選択肢が増える

VETS INTERVIEW

クレボル対談

2025年12月、国内で初めて犬用催吐剤として承認された「クレボル」が販売開始となりました。
従来の注射剤とは異なる点眼薬で催吐効果が認められるクレボルによって、治療の選択肢が増えることが期待されます。

今回は、TRVA動物医療センターの塗木貴臣先生と実際にクレボルを製造している、Orion Group Orion Pharma社Heidi Jarvimaki先生、Terttu Lamminen先生の3名でクレボルの開発背景からメリット、副作用や対応策など幅広くお話していただきました。

記事提供:物産アニマルヘルス株式会社

インタビュー
Marketing Manager at Orion Group Orion Pharma
TRVA動物医療センター 院長
Clinical Development Head at Orion Group Orion Pharma
欧米における催吐薬の現状とクレボルの開発
塗木先生
日本では犬の催吐処置に主にトラネキサム酸やアポモルヒネが使われていますが、国内で初めて犬用催吐剤として承認されたクレボルの登場により治療の選択肢が増えることが期待されます。
またどのような経緯でクレボルの開発に至ったのでしょうか?
Terttu先生
オリオン社は、2012年に犬の飼い主がソーシャルメディアでよく検索している項目を調査したところ、犬にとっての有害物質が頻繁に検索されていることがわかりました。
さらに、犬の嘔吐誘発もよく検索されていました。これらの結果から、犬が誤って有毒なものを飲み込んだ際の影響や、誤飲時の対応について不安を抱えている飼い主が非常に多いことが推測されました。

そこで嘔吐を誘発する活性物質の探索を開始し、最終的にロピニロールにたどり着きました。
次に犬が有毒なものを食べた場合は、処置時間が重要になるため、薬物の迅速な吸収と速やかな効果発現が必要であると考えました。
ただし、侵襲性や専門的な技術が必要な注射剤は避けたいとも考えました。このような検討過程を経て、私たちが目指すべき製剤は催吐作用を持つ点眼薬であるという結論に至りました。

欧米の獣医師がクレボルを評価するポイント
塗木先生
クレボルが欧米で高く評価されている点を教えてください。
Heidi先生
欧米の獣医師がクレボルを最も評価しているのは投与の簡便さと効果の信頼性です。
クレボルには大きく3つの特徴があり、①使いやすいシンプルさ。②約50%の犬が10分以内に嘔吐し、95%の犬が30分以内に嘔吐したという効果(図1)の信頼性。
早い症例では投与後3分で嘔吐する犬もいました。③注射のように痛みや恐怖を与えない非侵襲性です。

クレボルの効果が得られなかった場合
塗木先生
クレボルを投与しても効果が得られなかった場合、どのように対処すればよいでしょうか?
例えば、アポモルヒネなど他の催吐剤を追加するのでしょうか?
Terttu先生
私たちの臨床試験ではクレボル1回投与後に87%の犬が嘔吐しましたが、投与後20分以内に嘔吐が始まらない場合は、1回目と同量の再投与が推奨されます。
この臨床試験の概要を説明します。試験実施計画書には投与後20分以内に嘔吐しない場合は2回目の投与をするように規定されていました。
そして本剤投与群100頭中30分以内に嘔吐しなかったのは5頭だけで、このうち2頭は33分と37分後に嘔吐し、残り3頭は嘔吐しませんでした。

注目していただきたい点は、嘔吐しなかった5頭がすべて2回目の投与が行われておらず、実施計画書の規定から逸脱していました。
つまり規定を遵守した95頭は嘔吐したため、嘔吐が起こらない場合は、20分以内の2回目の投与が非常に重要です。
理由は、クレボルは受容体選択性が高く、有効成分の血中濃度を高めることで、受容体への刺激が高まり効果がより発揮されると考えられるからです。

Heidi先生
クレボルもしくはアポモルヒネの投与で望ましい嘔吐が誘発されず、胃の内容物が残っている場合は、いずれかの薬剤の追加投与が可能であることを示す研究報告が1報あります。
ただしクレボルとアポモルヒネのように2つの異なるドパミン受容体作動薬を連続投与しても効果が認められない可能性もあり、獣医師が臨床状況を慎重に評価し、内視鏡検査、胃洗浄、活性炭投与、胃内容物の希釈など他の異物除去の検討が必要な場合もあります。

なお、クレボルを投与して嘔吐しないときに考えられることですが、犬によっては遺伝的にドパミン作動薬に対して耐性があり、この種の受容体作動薬の効果がほとんどない場合や、犬が何らかの制吐作用がある物質を摂取している場合、さらに、犬が摂取した物質の吸収時間が非常に短い場合などがあります。
ですから、嘔吐しないからといってすぐに別のドパミン作動薬を常に追加投与することは推奨しません。

クレボルの副作用と対応策
塗木先生
これまでに経験した有害事象とその対応策について教えてください。
Terttu先生
臨床試験でみられた有害事象は、一時的な心拍数の上昇、一時的な無気力もしくは疲労感及び目の充血、眼脂、瞬膜の突出などが報告されています。
また嘔吐回数は平均4~5回ですが、もっと多く嘔吐することもあります(図2)。
嘔吐が止まらない場合は、ドパミン受容体拮抗薬であるメトクロプラミドの注射が効果的です。これは、処置後帰宅する前に嘔吐を止めるためによく使用されます。

塗木先生
ほとんどの動物病院ではメトクロプラミドを備えていると思いますので、その点は安心ですね。
では、本剤点眼後に眼の症状が現れた場合ですが、眼の症状は比較的目立つため、飼い主が気にすることも多いと思います。
獣医師として「問題ないので様子を見てください」と伝えるべきなのか、それとも何か介入すべきでしょうか?
Heidi先生
よくみられる眼の兆候として、血管拡張や血流の増加により赤く見えることがありますが、通常は数時間以内に自然に回復します。
まれなケースですが、透明な分泌物や涙嚢のようなものがみられたとの報告がごく少数あります。
瞬膜が突出し、眼瞼痙攣のように目を細める犬もいますが、これらも通常は軽度から中程度のものであり、数時間以内に自然に治ります。
したがって、眼関連の副作用に対してメトクロプラミドを使用する必要はほとんどありません。

日本におけるクレボルの展望
塗木先生
現在、日本の多くの獣医療現場で催吐処置にトラネキサム酸が選択されていますが、私は過去にトラネキサム酸投与後に痙攣が止まらなくなる重篤な副作用を経験しました。
その症例は、最終的に全身麻酔を使用して痙攣を抑えるしかありませんでした。
人工呼吸をかけながら6時間ほど麻酔を維持し、その後ゆっくり覚醒させるという大変な処置が必要でした。

私はその経験以降、催吐処置にトラネキサム酸を使用していません。
今回、クレボルが動物用医薬品として承認されたことで、催吐処置における安全性の向上が期待できると思います。
そして救急に携わる立場からみても、クレボルが日本で普及していくのがとても楽しみです。

もっと詳しい内容を知りたい方は

今回の先生方のインタビュー記事の全内容をPDFにてまとめております。
もしご興味ございましたら、下ボタンよりダウンロードいただき、ご覧くださいませ。

インタビュー全文はこちら

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