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点耳薬の選択と正しい使い方について(村山信雄先生)

VETS INTERVIEW

犬と猫の皮膚科 代表、アジア獣医皮膚科専門医
Q.外耳炎に対する点耳薬の選び方、 選択の基準を教えてください
A.点耳薬の選択において、世界基準はないんですよ。
私個人としては、初めに使う薬剤は なるべく力価の高いグルココルチコイド、VERY STRONGもしくはSTRONGを使用するようにしています。
Q.先生は剤形も考慮されますか?
A.おっしゃる通り、力価だけでなくどの剤形の薬剤を使うかも重要であると考えています。グルココルチコイドの点耳薬は極めて液体に近いローション、ジェル、軟膏タイプのものがあります。普段先生方が使い慣れているものを選択するといいですが、耳の状態に合わせて選択することも大切です

ローションタイプのものは持続時間が短くなるため、比較的耳が塞がっていないようなタイプの炎症ですとより長時間作用する剤形のものを選択するようにしています。また、ジェル、軟膏タイプのものは投与した後に急性難聴になる可能性があることを知っておいてください。そもそも外耳炎では自浄作用が低下しているので耳垢を排出させる機能が低下しています。

粘度が高いタイプの薬剤は効果的ではありますが、その点耳薬の基剤が残る可能性があるため、当院ではどの剤形の点耳薬を使用する場合でも、1~2日程度は耳が聞こえにくくなることがありますよ、と話をします。

Q.ありがとうございます。製品によって異なるとは思うのですが、 点耳薬はどのくらいの量を使用されていますか?
A.そうですね、耳の炎症がどの部位に生じているのかをきちんと把握し、そこに薬剤がしっかりと行き届くような量を投与する必要があります。多くの犬が外耳炎を繰り返し発症しますが、そのひとつの原因として、実は水平耳道の炎症が治りきっていない、ということが挙げられます。

一般的な犬の耳の直径が5mm、耳道の長さが5cmであると考えると、耳の耳道内の体積は1㎤(1mL)ですよね。そこに点耳薬を2,3滴投与するとしましょう。点耳薬は1滴 0.04~0.05ml程度ですので、2,3滴は0.1~0.15mlに相当します。この量では垂直耳道だけに薬剤がとどまり、水平耳道までは行き届きません。ある成書には、小型犬では0.25ml、中型犬では0.5ml、大型犬では0.75mlと投与量が記載されています。

実際の現場では、私は小型犬でもだいたい5~10滴程度と、多少多めに投与していることが多いです。

Q.ありがとうございます。点耳薬をいつまで投与するのがよいのか、先生のお考えを聞かせてください。
A.1 週間後に再度診察に来てもらって再評価を行う、それまでは点耳を続けてもらうのがベストではないかと思います。ご家族の判断にお任せすると、ある程度耳の炎症が引くと耳を気にする・頭を振るといった行動がなくなりますが、その時点で点耳をやめてしまうかもしれません。

ただ、まだ完全には治ってはいないはずです。そうすると再発しますし、再発時には最初の発症時よりも悪化している可能性が高いので、しっかり治すという意味で症状が落ち着いてから更に数日は点耳していただく方がいいと考えています

Q.先生はプロアクティブ療法も行いますか?
A.きれいな耳だからこそ週に1回や2回など、定期的に点耳薬を投与しましょう、といった考え方がありますね。これは多くの外耳炎の症例は再発する可能性があるためです。私は再発を繰り返す症例に対しては、プロアクティブ療法をすすめています

ただし、VERY STRONGあるいは STRONGの力価のグルココルチコイドを週1回といった頻度で投与すると耳の皮膚が菲薄化する可能性があるため、定期的に耳の状態を確認することをおすすめします。

Q.外耳炎治療で重要なことは、大前提として耳の構造と機能を健康な状態へと戻すこと、だと思いますが、点耳薬での治療以外に何かポイントはありますか?
A.他のポイントは、耳洗浄によって耳垢をしっかり取り除くことです。垂直耳道の洗浄は簡単ですが、実は水平耳道の洗浄は難しいです。この水平耳道がきれいに洗浄しきれないと再発する可能性があります。

私が経験した実際の症例で驚いたことがありました。私が診察した前日にかかりつけ医で軟膏タイプの薬剤を点耳されていた犬ですが、私が診察した時には、その薬剤と耳垢が上手く混ざり合うことで耳道全周に点耳薬が行き届いていたのです。

犬の性格や外耳炎の重症度によっては多少耳垢が残ってしまうこともあります。麻酔下できれいに取り除くことが理想ですが、それが難しく、白っぽいベタベタした耳垢が主体である症例に対しては、軟膏タイプの薬剤を選択肢のひとつとして考えるようになりました。

Q.ベタベタした耳垢で、耳洗浄したいけれど嫌がってさせてくれない、といった症例に軟膏タイプの点耳薬を入れてしばらくしてから洗浄する、といった方法も考えられますか?
A.そうですね、そういったことを軟膏タイプの点耳薬ではなく、洗浄液で行うときがあります。例えばZENOAQさんのソノティクス( 製造元:ベトキノール(販売元:ゼノアック))は粘度があると思うのですが、洗浄液を耳の中に入れてマッサージし、5分~10分ほど経過してから洗浄した方が耳垢をより効率よく取り除くことができる場合があります

ただ、メーカーさんは洗浄液で耳洗浄を行ったあとはそのままで大丈夫と仰っていますが、当院では炎症が起きている部位に界面活性剤やアルコールが含まれているものが残るのは良いことではないと考えているため、洗浄液を使ったあとは0.05%クロルヘキシジンで洗い流すようにしています。

Q.外耳炎治療において、飼い主さんに伝えていることはありますか?
A.点耳薬の投与量が本当にきちんと足りているのか分からない、という話をよく聞きます。私がご家族にお伝えするのは、少ない量よりも多めに点耳した方がより効果的、もし5滴入ったかどうか分からないのであればさらに数滴入れてください、といったことです。あとは先程お話しした急性難聴のことは触れるようにしています。

点耳薬を投与したあと一時的に耳が聞こえなくなる可能性があるかもしれないこと、一方で耳が聞こえなくなっているということは水平耳道にまでしっかりと点耳薬が行き届いていると言えるので外耳炎治療がしっかりできていること、もし1週間後の再診時に聞こえていなくても、洗浄して点耳薬をしっかりと洗い流せば聞こえるようになるので、心配せずに点耳してほしいことはお伝えします。

Q.他に外耳炎の治療におけるポイントはありますか?
A.“治療のとりあえず” を決める、ということですかね。一般的な外耳炎の症例が来た時には、まずはこの洗浄液で洗って耳垢を取り除き、この点耳薬を使う、そして1週間後に判断する、といった自分、あるいは病院での “治療のとりあえず” を決めておき、それに従って治療すると楽かなと思います。この治療で良化しなかった場合にはどうするのかも決めておくとよいでしょう。
Q.治療の選択肢を増やすということに関してはどうでしょうか?
A.点耳薬自体、力価や剤形がさまざまであり、選択肢がたくさんあります。その中で高価なものは使わない・使い慣れた剤形しか使わない、などのように自ら選択肢を狭めなくてよい、ということです。

以上、村山先生へのインタビューをお届けいたしました。点耳薬の選択や使い方に悩まれている方は、参考になれば幸いです。

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