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はじめまして。志和・髙橋綜合法律事務所の弁護士の青木優と申します。
これから、動物病院に関する法的トラブルについて記事を配信していきますので、皆様が動物病院を経営していくうえで、少しでもお役に立てればと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
第1回は獣医療過誤についての記事になります。動物病院を経営するうえで、切っても切り離せないテーマになるかと思います。
それでは、早速、実際の相談内容を見ていきましょう。
獣医療過誤の想定事例
Situation
善管注意義務?全然わからないです。
要するに、一般的な水準を満たす医療をしなさいということであり、最新の設備を導入しろとか、看護を24時間休まずやれとか、最新の論文に目を通せ、とまで要求されているわけではありません。
もっとも、日々、臨床獣医学は進歩し、「一般に求められる獣医療水準」自体は上がっていくので、日々の獣医学の研鑽は必要になるでしょう。
また、治療方法に複数の選択肢がある場合は飼い主が適切な治療方法を選択できるよう、獣医師は、それぞれの治療方法の内容、リスク、料金などを飼い主に分かるよう説明しなければならないという説明義務も負っています。
これらの義務に違反した場合、獣医師に責任が認められるということになります。
本件の場合、犬の保定の仕方によっては、病院の責任が認められる可能性があると思います。
そして、怪我の場合には、治療費、(場合によっては)慰謝料、死亡の場合には、ペットの価値(時価額)、慰謝料、葬儀費用が認められることが多いです。
本件においては、犬は亡くなってないので、治療費、飼い主の慰謝料が認められると思いますが、飼い主の休業損害は認められないでしょうね。治療費は、治療内容によると思いますが、慰謝料に関しては犬が亡くなったわけではないので、数万円程度が妥当ではないでしょうか。
ちなみに、本件と似たような事案が裁判で争われたことがあります。その事案は、犬が歯周治療中に右股関節を脱臼する傷害を負ったというものですが、裁判所は、犬の歯科治療をする際には、犬が動いて治療の妨げとならないよう保定する必要があるところ、伏せている犬が後肢を伸ばしたときに股関節に外力が加わると脱臼するおそれがあるから、医療関係者にはそのようなことが起こらないように適切な方法をもって保定すべき注意義務があり、同義務違反が認められるとして、治療費約40万円、慰謝料3万円の支払を命じました。
最後に
皆様、いかがでしたでしょうか。
このように獣医療過誤といっても、損害賠償請求が認められるためには様々な要件を満たす必要があり、動物病院が直ちに責任を負うわけではありません。
ですので、飼い主の方から獣医療過誤に基づく損害賠償請求をされたとしても、すぐに支払うのではなく、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
本記事に関するご質問や、ご相談は志和・髙橋綜合法律事務所までお願いいたします。