VETS TECH論文ニュースの記事内にあるアンケートから、回答者数が多かったものを一部ピックアップして報告いたします。
第10回目のレポートは猫の問題行動へのベンラファキシンの使用、CKD猫への低リン食による高Ca血症、脾臓血管肉腫へのカルボプラチンの使用、ピロキシカムとH2ブロッカー、PPIの併用についてです。
回答者:VETS TECH会員の獣医師
N数:各グラフ内数値を参照
回答期間:各記事配信日~2022年11月3日
集計時期:2022年11月3日時点
猫の問題行動に対してベンラファキシン(イフェクサー)の使用について
回答者数は632名。99%とほとんどの方が使用したことがないと回答されました。ベンラファキシンはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)に分類され、ヒトでは抗うつ薬として使用されています。今回の論文では恐怖反応、攻撃行動、不適切な排泄行動などの問題行動が認められる猫において改善効果が報告されましたので、今後猫での使用が増えてくるかもしれません。
CKDの猫における低リン食給与後の高カルシウム血症の経験について
回答者数は418名。複数症例高Ca血症の経験があると答えた方は約3割、1症例経験した方を含めると約4割の方が低リン食給与後に高Ca血症を経験したことがあると回答されています。論文ではCKDの猫において低リン食給与後に高Ca血症が認められた猫において、中等度のリン制限食に切り替えることで高Ca血症が是正されたという報告がでましたので、食事によって誘発されていることが疑わしい場合には、リンの制限する程度を緩めることを検討されても良いかもしれません。
犬の脾臓血管肉腫へのカルボプラチンの使用について
回答者数は576名。犬の脾臓血管肉腫にカルボプラチンを使用したことがある方は約2割でした。脾臓血管肉腫の犬における脾臓摘出後のカルポプラチンとドキソルビシンの有効性に関する報告では、ステージⅠおよびⅡにおいて、ドキソルビシンとカルボプラチンの生存期間に有意差はなかったことが報告されています。そのため、ドキソルビシンの投与が禁忌である可能性のある症例では、カルボプラチンは代替薬として使用される機会も今後増えてくるかもしれません。
腫瘍の犬へのピロキシカム使用時のH2ブロッカー、PPIの併用について
回答者数は693名。H2ブロッカーの併用は約37%、PPIの併用は約14%と全体の半数でいずれかを併用していると回答されていました。最近の研究で癌を有する犬においてピロキシカムにオメプラゾールやファモチジンを併用すると、胃腸障害の有害事象の発生を増加させる可能性があることが報告されましたので、今後使用傾向が変わってくる可能性もあります。
今回の報告は以上です。今後もアンケート結果を一部ピックアップしてまとめていきたいと思います。
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