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みなさん、こんにちは。
獣医師・キャリアコンサルタントの岡野です。
新社会人として働き始めた方、新入社員の入社や自身の転職による職場環境の変化など、何かしら生活環境が変わるのが4月ですね。今年は、環境の変化に加え、コロナ禍での自粛生活を強いられ、なかなか生活リズムが整わない方も多いと思います。近頃では、著名な芸能人やスポーツ選手のメンタル不調のニュースも話題になっていますね。
次第に新しい環境に慣れ、初期の緊張が緩んでくると、「集中力が続かない」「倦怠感を感じる」「疲れが取れない」といった症状が現れ、メンタル不調を訴える人が増えるのもこの時期です。一般的には、5月病などともいわれますね。
特に動物病院では、4月から6月は予防の時期に突入し、1年の中でも最も忙しい時期です。仕事に追われ、自身の心の疲れに気付かないことも。心の健康には、ストレスを溜めないこと、また自身のメンタル不調に関して早期に気付くことが大切です。
今回は、メンタルヘルスの観点から、ストレスに対して上手く対処するということに関して、獣医師・キャリアコンサルタントの視点からお伝えしたいと思います。
メンタルヘルス不調とは
心に負荷(ストレス)がかかり過ぎると、体調や態度、物事への考え方などに通常と異なる変化が現れます。「心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題」と、メンタルヘルス不調は広く定義されます。食欲低下、不眠といった症状から、うつ病と診断のつくもの、全て対象となります。自分で気付くサインと、周囲の人が気付きやすいサインがあります。
身体の変化 | 気持ちの変化 | 行動の変化 |
---|---|---|
・顔色や表情がさえない或いは険しい ・疲れがひどい ・ずっと体調が悪い ・熟睡できない、寝不足 ・食事がおいしくない、食欲がない ・動悸、息苦しくなる | ・何事も以前のように楽しめない ・気分が憂鬱で沈みがち ・自分に尿力や価値がないと感じる ・いつも誰かに監視されているような気がする | ・考えがまとまらず、決断ができなくなる ・朝、布団から出られないことがある ・遅刻や早退、欠勤などが増える ・ミスが増える ・身だしなみが乱れる ・酒臭いことがある |
約4人に1人が「5月病」を経験
身近なメンタル不調として、5月病があります。「5月病」は正式な医学用語ではありません。医療機関で受診すれば、「軽度のうつ」や「適応障害」といった病名をつけられることもあります。元気に入社してきた新入社員が、なんとなく元気がない、集中力が欠けているなどと感じたことはありませんか?
では、実際にどのくらいの人が5月病にかかるのでしょうか。
チューリッヒ生命が2018 年4月に、現在のビジネスパーソンが抱えるストレスについての調査を全国の20歳~59歳・合計1,000人に実施したところ、「これまでに5月病になったことがあるか」との質問に、男性は21.6%、女性では25.0%が「ある」と回答しています。全体で23.3%が「ある」と回答し、約4人に1人が「5月病」を経験しているとの結果が明らかになりました。
このようにメンタル不調は特別なものではなく、誰にでも起こる可能性のある心の風邪のようなものです。体調不良と同様に心の不良も、軽いうちに治療を受けた方が早く良くなります。
自分のストレスを整理する
そもそも、「ストレス」とは何でしょうか?
ストレスとは、「ある刺激に対して心身に生じる反応状態」のことを言います。よって、ストレスには良いストレスと悪いストレスがあります。例に挙げたように、スポーツ観戦をして喜ぶという、嬉しいストレスも心の負荷になっています。ストレスとは本来、それ自体は悪いものではなく、適度なストレスは生き生きとした活動に必要なものなのです。
良いストレスの例 | 悪いストレスの例 |
---|---|
・スポーツ観戦で喜んだり悔しい思いをしたりする ・上司からの期待を感じてモチベーションが上がる ・ライバルとの競争で負けたくない思いで頑張る | ・苦手な人と長時間一緒に過ごさねばならずイライラする ・休みなく働き続け、疲れてやる気が起こらなくなる ・蒸し暑い部屋の中での作業で不快を感じる |
大きなストレスの要因の例 | 小さなストレスの要因の例 |
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・親しい人との別れ、死別 ・自身の病気やケガ ・転勤、異動、退職 ・生活状況の変化 | ・朝の通勤電車の遅延 ・仕事での些細なミス ・家族や友人とのケンカ ・ちょっとしたコミュニケーションのすれ違い |
自分の考え方のクセに気づき、自分に優しくなろう
ストレスや疲れを感じる背景には、自分で自分を追い込んでしまっている面もあるかもしれません。自分の考え方のクセに気付いて、自分のストレスとどのような関連があるか知ることで、ストレスに対処しやすくなります。
「全か無か」思考(完璧主義)
物事を「白か黒か」「成功か失敗か」の両極端に分けて考えてしまうタイプです。「できなかったこと」ではなく、「できていること」に目を向けてみましょう。
「すべき」思考
自分の凝り固まった基準でしか行動できず、うまくいかないと罪の意識をもったり、相手に腹を立ててしまうタイプです。否定的に断定せず「◯○であれば良い」程度の言い方に変えてみましょう。
過度の一般化
否定的なことがあると「いつもこうだ」と一般化してしまうタイプです。「本当に毎回そうだろうか」と自分に問い直してみましょう。そうでない時を発見できれば、少し気持ちが落ち着くでしょう。
心のフィルター
物事のプラスの面は目に入らず、マイナスばかりが見えてしまうタイプです。些細な指摘でも、そればかりクヨクヨ考えてしまう傾向があります。
自己中心的・自己関連付け
物事に対して、必要以上に自分に責任があると考えてしまうタイプです。一見責任感が強くいいように思われるのですが、過度に自分を責めることになり、心に負担がかかりやすくなります。
ストレスの対処法を多くもっておこう
ストレスへの対処法は、ストレスを溜めないことが何より大切です。そのためには、①ストレス要因から逃げる、②人に話をきいてもらうことがお勧めです。日頃から自分に合ったストレス対処法を知っておくことで、心の健康を維持しましょう。
親しい人たちと交流する
友人や知人と話をすることで、不安やイライラした気持ちが整理されて、自ずと解決策が見えたりアドバイスがもらえるなど、自分にはなかった視点に気づくことができます。
笑う
笑いによって、自律神経のバランスを整えたり、免疫力を正常化させたりする効果もあります。日常生活に笑いを取り入れましょう。
仕事から離れた趣味を持つ
趣味を持つことは、大切です。仕事のこと、また他のストレスから趣味に打ち込むことで、脳が解放されます。また、趣味を介した仕事とは関係のない人との交流は、新たな人間関係を海、生活の幅を広げることにも繋がります。
まとめ
現代社会において、ストレスをゼロにするということはできません。しかし、自身がストレスの要因に気付き、対処することは可能です。ストレスは発散するものではなく、管理するもの、管理できるものだと考えています(ストレスマネジマント)。
いきいき働くためには、自身のストレスと上手に付き合うことが大切です。自身にあった、ストレス対処法をたくさん見つけましょう。
獣医師、キャリアコンサルタント
日本大学獣医学科卒業後、20年近く小動物臨床に従事し、また10年以上管理職を経験。
現在は、獣医師そしてキャリアコンサルタントの視点から、働くスタッフと経営者の相談に乗りながら動物病院専門のトータルアドバイザーとして動物病院をサポート。
管理職や20年近くに及ぶ現場での一般臨床の経験や知識を基に、働くスタッフが笑顔であり続ける環境を目指し、奮闘中。
経歴・職歴
近江兄弟社高等学校卒業
2001年 日本大学農獣医学部獣医学科卒業
2001年 国家資格 獣医師免許取得
2001-2019年 動物病院(京都市)勤務 在職中は副院長・院長・事務局長
2019年 Veterinary Career Lab SMILE設立
2019年 国家資格 キャリアコンサルタント取得
比較眼科学会 臨床生涯教育プログラムセミナー 修了
Improve International General Practitionar Certificate Programme in Small Animal Surgery 修了
国際TA協会 TA101修了