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高グレード多中心性または縦郭リンパ腫の猫に対するロムスチンを用いた多剤化学療法プロトコールの効果についてブラジルのRodrigo S Horta氏らは、21頭(うち19頭はFeLV陽性)の猫を用いてプロスペクティブに研究を実施した。その結果、生存期間中央値は214日、FeLV陽性の猫であっても171日と既存の研究結果で報告されている生存期間中央値よりも良好な結果が得られることが明らかになった。結果はJournal of Feline Medicine and Surgery Online Firstに掲載された。
研究の背景
リンパ腫は猫の造血器腫瘍の最大で90%、猫の腫瘍全体でも約1/3を占めるとされている腫瘍である。猫白血病ウイルス(FeLV)が関連していない場合は腸および腸間膜リンパ節が主要発生部位であるが、FeLVが関連している場合には多中心性ないし縦郭であることが多いとされる。中~高グレードのリンパ腫の猫に対する治療法としてCOP療法(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)が多く用いられるが、FeLV陽性猫では生存期間中央値は37日~126.3日、FeLV陰性では105日~388日と報告されている。ロムスチンは中~高グレードのリンパ腫の猫に対するレスキュー療法として使用されるが、導入薬としての可能性も報告されている。そこで著者らはロムスチン、ビンクリスチン、プレドニゾロン、ドキソルビシンを用いたLOPH療法の効果について評価することを計画した。
本研究には、2018年3月から2019年6月までに来院した高グレードの多中心性または縦郭リンパ腫の猫をプロスペクティブに組み入れした。すべての猫にFeLVの検査(SNAP検査、陰性の場合はPCR検査)を実施した。
LOPH療法のプロトコール
LOPH療法のプロトコールは下表のとおり。
上記プロトコールを5回(計20週)実施した。プレドニゾロンは最初のサイクルでは10mg/猫/日で投与し、そこから徐々に減量し、中止した。また、ドキソルビシン投与時にはデキサメタゾン0.5mg/kgを事前に静脈内投与した。なお、20週にわたるプロトコールを完了出来た猫は維持フェーズとしてクロラムブシル、ビンクリスチンを投与した(詳細は原文参照)。
週 薬剤
1 ロムスチン30-40mg/m2(6mg/3kg, 9mg/3-4.5kg, 12mg/4.5-7kg, 15mg/>7kg) PO
2 ビンクリスチン0.6mg/m2 IP
3 ドキソルビシン1mg/kg IV
4 ビンクリスチン0.6mg/m2 IP
評価
治療に対する反応を以下のように定義し、評価した。
・完全寛解:すべての病変、臨床徴候の消失
・部分寛解:50%以上、100%未満の退縮
・反応なし:50%未満の退縮または増加
また、カプランマイヤー曲線による無病期間(寛解から疾患の再発までの期間)および生存期間中央値(LOPH療法開始からリンパ腫に関連した死亡までの期間)を算出した。
本研究には21頭の猫が組み入れられた。このうち、19頭がFeLV陽性であった。21頭中14頭は縦郭リンパ腫、7頭は多中心性リンパ腫であった。21頭中7頭は20週にわたるプロトコールを完了出来た。
LOPH療法に対する反応
治療に対する反応率は下グラフのとおり。
無病期間
21頭の無病期間は165日、FeLV陽性猫のみでも同じく165日であった。なお、多中心性リンパ腫の猫は観察期間中にカプランマイヤー曲線の50%に達しなかったため算出できなかった。
生存期間
結果は下グラフのとおり。
21頭の生存期間は214日、FeLV陽性猫のみでは171日であった。また、縦郭リンパ腫の猫では214日、多中心性リンパ腫の猫では50%に達しなかったため算出できなかった。
有害事象
観察期間中に認められた有害事象は食欲不振と嘔吐が4頭の猫で、好中球減少症が16頭、血小板減少症が21頭、貧血が15頭の猫で生じた。G-CSFの投与によって好中球数を増加させ、治療継続できるようにした。
結論
これらの結果から著者らは、LOPH療法はFeLV陽性のリンパ腫の猫に良好な忍容性を示し、過去に報告されている治療法よりも良好な生存期間が得られることが明らかになったと報告している。今後、リンパ腫の解剖学的な発生部位やFeLVの感染状況に応じた異なるプロトコールの有効性を評価していくことが必要であると述べている。
- Highlights
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高グレードの多中心性ないし縦郭リンパ腫の猫21頭を用いてプロスペクティブに研究
ロムスチンを含むLOPH療法の有効性を評価
寛解率は81%
無病期間は165日
生存期間は全体で214日、FeLV陽性猫のみでも171日
論文情報:https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X20926893
※正確な論文の解釈をするためにも原文を読むことをお勧めいたします。