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犬の尿比重(USG)の個体内変動についてアメリカのAdam Rudinsky氏らは、103頭の見た目健康な犬を用いて朝一番のUSGをプロスペクティブに調査した。その結果、2週間の個体内変動(最大USG―最小USG)は平均0.015であることが明らかになった。結果はJournal of Veterinary Internal Medicine 2019年9、10月号に掲載された。
研究の背景
尿検査は様々な疾患のスクリーニング検査だけでなく、特定の疾患の確定診断、モニタリングなどとして用いることができる汎用性の高い検査である。中でも尿比重(USG)は腎機能の評価および脱水に対する反応の有無などを簡易的に推定することができる項目である。しかしながらUSGは個々の犬の環境、活動性、食物の種類や飲水量によって変化する。個体内でのUSGの変化が、疾患によるものなのか個体内変動なのかは、時に判断に苦慮する。現在の尿比重測定の推奨されるタイミングは、一日で最も濃縮されたUSGが得られる可能性が高い朝一番の尿サンプルである。そこで著者らは、見た目が健康な犬を用いて朝一番の尿サンプルの個体内変動を調査、評価することを計画した。
本研究はオハイオ州立大学獣医学部の教職員および学生が飼っている犬を対象に組み入れした。USGを変化させる可能性がある全身疾患と一致する多飲多尿や臨床症状の既往歴がなく、飼い主が健康と判断している犬を組み入れ条件とし、病気の犬や試験開始前6か月以内にUSGに影響を与える薬物を投与している犬や5か月齢未満の犬は除外した。
尿比重測定
組み入れられた犬の朝一番(摂食、飲水前)の尿を収集した。サンプルは2週間にわたって各週で連続3日間(計6検体)採取した。採取後冷蔵で保存し、12時間以内に測定した。なお、USG測定前には室温まで温めた。また、ディップスティックで尿糖、血液、ケトン体のいずれかが陽性の場合や尿蛋白が100㎎/dLを超える場合にはその犬は解析から除外した。
評価
各犬の平均USGならびに最大USGと最小USGの差を算出した。また犬の適切な尿濃縮能のカットオフ値である1.03の上下両方の値を示した犬の数を算出した。
本研究には103頭の犬が組み入れられた。平均年齢は3.8歳で平均の尿比重は1.04であった。平均尿比重の範囲と頭数は下グラフのとおり。
性別や避妊去勢、犬種、体重による平均尿比重の違いは認められなかった。年齢のみが尿比重に影響を与えており、1歳上昇するごとに0.001低下した。
個体内変動
各犬の2週間の最大USGと最小USGの差の平均値は0.015であった。第1週と第2週のそれぞれの最大USGと最小USGの差(平均値)は0.009、0.01であった。2週間の中でカットオフの上下の値をそれぞれ示した個体数は33%(約3頭に1頭)であった。
結論
これらの結果から著者らは、健康な動物においてUSGの個体内変動は認められ、特にカットオフ値を用いて判断する際にはタイミングによってカットオフ値を上下することがあるため、結果の解釈には個体内変動の可能性も留意すべきであると述べている。
- Highlights
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見た目が健康な犬103頭の朝一番の尿比重を調査
2週間尿比重を連続3日間測定し、個体内変動を評価
平均の個体内変動は0.015
約3頭に1頭が2週間でカットオフ値(1.03)の上下両方の値を示した
論文情報:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jvim.15592
(こちらはOpen Accessのため、元文献が上記リンクより閲覧可能です)
※正確な論文の解釈をするためにも原文を読むことをお勧めいたします。