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非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎の猫に対するマロピタントの有効性についてベルギーのElisa Maina氏らは、12頭の猫を用いてマロピタント2mg/kg 1日1回経口投与を4週間行った。その結果、91.7%の猫で猫アレルギー性皮膚炎の臨床スコア (SCORFAD)および視覚アナログスケール(VAS)が改善し、飼い主評価でも83.3%が効果について優良/良好であることが明らかとなった。結果はJournal of Feline Medicine and Surgery Online Firstに掲載された。
研究の背景
非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎は猫に好発し、管理するのが難しい疾患である。免疫療法に関する研究は少なく、多くの場合が痒みや皮膚病変に対して薬による治療を行っている。これまでに抗ヒスタミン薬や必須脂肪酸、グルココルチコイド、シクロスポリン、オクラシチニブでの研究報告があるが、これらの薬が奏功しないこともあり、有効かつ安全な他の治療薬が必要とされる。マロピタントはニューロキニン1(NK1)受容体の阻害薬であり、嘔吐中枢および化学受容器引金帯(CTZ)に分布するNK1受容体とサブスタンスPの結合を阻害することにより、さまざまな刺激が原因の嘔吐に対して制吐作用を示すことが知られている。このサブスタンスPは掻痒性の神経ペプチドでもあり、NK1受容体と結合することで痒みを引き起こす。ヒトにおいて、NK1受容体阻害薬であるアプレピタントは様々な原因の痒みを減少させることが知られている。そこで著者らは、非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎の猫に対するマロピタントの有効性、安全性を評価することを計画した。
本研究には非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎の猫12頭が組み入れられ、プロスペクティブに研究を実施した。非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎の診断は、臨床検査、他の掻痒性皮膚疾患の除外、Favrot’sの診断基準を満たすものとした。なお、二次感染が認められている場合には組み入れ前に抗生剤や抗真菌薬の局所ないし全身投与により治療を行った。本研究でのマロピタント対象症例として、以下の2つのカテゴリーに該当する猫を選んだ。
- マロピタント対象症例
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1.併発疾患の関係で免疫調整療法や免疫抑制剤での治療歴がなく、シクロスポリンやプレドニゾロンに対して部分的にしか反応しない、あるいは反応しなかった猫
2.痒みに対する治療を始めて2か月以内の猫
これらの猫は、試験期間中にはこれまで使用していた薬を継続して用い、用量変更も行わないようにした。また、食餌や環境なども変えないようにした。
治療内容
組み入れられた猫は、マロピタント2mg/kg 1日1回経口投与を4週間行った。
評価
病変および痒みの改善を主要評価項目とし、組み入れ時と4週間後に以下の評価を行った。
猫アレルギー性皮膚炎の臨床スコア(Scoring Feline Allergic Dermatitis:SCORFAD)
検査者によって臨床的に病変を評価し、0-16(病変が悪いほどスコアが高い)までの間でスコアをつけた。
視覚アナログスケール(VAS)
飼い主によって痒みについて0-10(スコアが高いほど痒い)までの間でスコアをつけた。
また、二次評価項目として全体的な有効性について飼い主に0-3(0:悪い、1:不変、2:良好、3:優良)で評価をしてもらった。
忍容性
試験期間中に発生したあらゆる有害事象を記録した。また、全体的な忍容性について飼い主に0-3段階(0:悪い、1:不変、2:良好、3:優良)で評価をしてもらった。
組み入れられた12頭の猫全頭で試験を完了することができた。組み入れられた猫の平均体重は4.8kg、平均年齢は5.6歳、マロピタントの平均投与量は2.22㎎/kgであった。
有効性について
SCORFADとVASの組み入れ時とマロピタントによる治療4週間後の値は下グラフのとおり。
SCORFADおよびVASいずれもが改善した猫は11/12頭(91.7%)であった。なお、2つのカテゴリーの猫における痒みの改善については両カテゴリー間で有意差は認められなかった。また、有効性の飼い主評価の結果は下グラフのとおり。
安全性について
12頭中2頭で唾液分泌の増加が認められたが、その他の有害事象は認められなかった。忍容性については有効性の飼い主評価と同じ割合であった。
結論
これらの結果から著者らはマロピタントは非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎の猫、中でも免疫抑制療法などが使用できない或いは反応が乏しい症例に対する治療の選択肢となりうるだろうと報告している。今後、より長期間にわたるマロピタントの使用の安全性について評価される必要があると述べている。
- Highlights
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非ノミ非食物誘発性過敏性皮膚炎の猫に対するマロピタントの有効性について調査
12頭の猫にマロピタント2mg/kg SIDを4週間投与
12頭中11頭で臨床スコアおよび痒みが改善
忍容性も良好で飼い主の83%が優良ないし良好と評価
パイロット試験のため、より規模の大きな長期試験が今後期待される
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論文情報:https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X18811372
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