アメリカのAratana TherapeuticsのJ. A. Wofford氏らは、12頭の猫を用いてグレリン受容体作動薬であるカプロモレリンを91日間投与し、安全性評価を実施した。その結果、プラセボ群と比べて嘔吐や唾液分泌過多などは多く認められたものの、臨床病理検査結果では臨床的に有意な差は認められなかったことが報告された。また、プラセボ群と比べて体重の有意な増加、成長ホルモン、インスリン様成長因子(IGF-1)濃度の増加が認められることが明らかとなった。結果はJournal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics 2018年4月号に掲載された。
カプロモレリンはグレリン受容体作動薬で成長ホルモン分泌促進受容体(GFS-Rs)に結合する。そのため、カプロモレリンには食欲増進作用や脳下垂体からの成長ホルモン分泌促進作用があるとされている。また、成長ホルモンの分泌によって肝臓からのインスリン様成長因子(IGF-1)の分泌が促進されることが知られている。実際に高齢のヒトにおいて、カプロモレリンの経口投与はIGF-1濃度の増加、除脂肪体重の増加が認められることが知られており、犬においても食欲の増加、摂食量の増加、体重の増加、IGF-1濃度の増加が確認されている。カプロモレリンは現在、Food and Drug Administration (FDA)によって、犬の食欲増進薬として承認されているが、猫における安全性、有効性についてはよくわかっていない。そこで著者らは、猫において91日間のプラセボ対象試験による安全性を評価することを計画した。
本試験には12頭の猫(雄6頭、雌6頭)が組み入れられた。これらの猫を治療薬群とプラセボ群で2:1の比率になるようにランダムに割り振り、治療薬群には6mg/kgのカプロモレリンを1日1回、プラセボ群にはプラセボを1日1回投与した。食餌はPurina®社のCat Chow®300gを投薬1時間後に与え、6時間後に片づけ、その間の摂食量を計測した。また臨床観察、身体検査、臨床病理検査(全血球検査、生化学検査、尿検査)を実施した。成長ホルモン、IGF-1濃度については0日目、31日目、59日目、91日目の投薬前(0時間)と投薬後8時間を測定した。
体重と摂食量
プラセボ群と比べて治療薬群において有意な体重増加と摂食量の増加傾向が認められた。
異常所見
異常所見として、嘔吐、唾液分泌過多、首振り行動、舌なめずり行動が観察された。これらは治療薬群のほうが多く認められたが、投薬直後に認められることが多く、5分以内にこれら異常所見の多くは認められなくなった。
血液生化学的検査
治療薬による影響と思われる変化は以下の通りであった。
血球検査:好中球の割合増加、リンパ球数の低下、リンパ球の割合低下
生化学検査:カリウム濃度の低下、グルコース濃度の上昇、フルクトサミン濃度の増加(いずれも参考基準値内)
成長ホルモン濃度、IGF-1濃度
成長ホルモン濃度:0日目、 30日目、91日目の検査において投薬8時間後の成長ホルモン濃度は投薬前(0時間)と比べて治療薬群において有意に増加していた。
IGF-1濃度:0日目、91日目の検査において投薬8時間後のIGF-1濃度は投薬前(0時間)と比べて治療薬群において有意に増加していた。
結論
これらの結果から著者らは、カプロモレリン6mg/kgの1日1回91日間の経口投与の猫における忍容性は良好で、将来的には食欲不振や体重減少の認められる猫に対して臨床的に有益な可能性があると報告した。また、今後具体的な治療薬としての濃度設定や臨床例での有効性、高濃度・長期にわたる安全性試験も予定していると報告した。
※この研究はAratana Therapeutics, Inc.の資金援助にて実施された。
論文情報:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvp.12459/full
(こちらはOpen Accessのため、元文献が上記リンクより閲覧可能です)
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